ダンサーの可動性とリスク管理:美しさとケガのリスクの両面から考える

ピラティス宝塚

こんにちは。
宝塚市のマシンピラティス スタジオstudio Y (スタジオイグレック)です。

当スタジオでは、姿勢改善や肩こり・腰痛などの不調緩和から、

バレエやダンスをされる方のトレーニングや、コンディショニングとしてのピラティスもご提供しています。

ピラティスを通して、より動きやすいからだづくりを目指しましょう。


はじめに


ダンサーにとって、可動性の高さは大きな武器となります。

しかし、可動性が高い一方で、怪我のリスクも高まるという側面も存在します。

本記事では、ダンサーの可動性について、メリットとデメリットの両面から考察し、可動性の高い身体を安全に維持するためのポイントを書いていきたいと思います。

ダンサーの身体的な特徴


まず、ダンスに携わっている方の大きな特徴のひとつとして、「柔らかい箇所が多い」ということが挙げられます。
普段から同じコミュニティの中にいると「(他の方と比較して)いや、全然柔らかくないんです!」という方でも、一般的な状態と比較してみると、随分と動きやすい箇所がたくさんある、ということがほとんどです。

ですので、「そんなに柔らかくないよ」と思われている方も、この前提のもとに読み進めてください。

この「柔らかい」というワードは頻繁に使われますが、人それぞれ認識が異なっているように思います。
一般的には、開脚がよく開くとか、立位前屈で床に手が付くとか、「結果の状態」を指すことが多くなりますが、運動指導や解剖学的な観点からの「柔らかい」は即ち「可動性が非常に優れている(場合によっては優れすぎている)」ことを指しているケースが結構あります。
それは、単純に筋肉の伸び縮みのレベルだけを対象にしているのではなく、関節のはまり具合、動く可動域、そしてその関節を取り巻く靭帯(筋肉)の状態を加味して、「可動性がどうであるか」ということを表現しています。
なので、平たく言いますと、関節のはまり方が浅かったり、周りの靭帯が少しゆるかったりすると、いわゆる「身体が柔らかい」というふうに一括りで捉えられやすい、ということです。
高い可動性を持っていることをhyperextensionと表現したり、日本語では過伸展といったりします。
この、一部または複数個所に可動性がある(柔らかい)方はこれまで、「柔らかいね!」と羨ましがられたり、褒められたりを繰り返してきた方が多いと思います。
可動性に優れているお身体をお持ちの方というのは、身体表現が必要になる競技やダンス界では大変重宝されます。
そういう方がダンスを始めることが多いのか、続ける中で残っていくことが多いのか、またはその両方とも考えられます。
いずれにしても、ダンス界や芸術的な分野では様々な段階で選ばれるためのひとつの重要な要素となり得ます。
積極的に採用されやすい、というわけです。
可動性のある身体を持つことは、観る人にいわば非日常性や美しさを感じさせることができるとも言えますので、表現者として活動することはとても合っていると判断できますし、その世界で活躍する可能性も高くなります。
ダンサーは、この優れた可動性がまずは前提条件、ゼロベースとなっています。
ある程度当たり前の、スタートラインということですね。


しかし、この分野をよく知らないピラティス指導者やトレーナーからは「過伸展!伸びすぎてる!」と指摘されることもあるかもしれません。
教科書としての「解剖学」という括りでいうと、その指摘自体は正しいことではありますが、前述したように解剖学の範疇からは超えたところに美しさを感じる、特異性を感じて惹かれる、という世界でもありますので、これをメリットとしておいておかなければいけない方々もいらっしゃるわけです。
なくしちゃダメ、修正しすぎたらよくない、という方もいらっしゃるということです。

双方の言い分があるのですが、所謂「指導者」という立場の人や、年齢が上の人、そして自分自身が身体的なことや解剖学にあまり詳しくないと感じている場合などは、「そうなのかな」と思ってしまいやすいくなります。

ダンサーの立場から考えると、柔らかさは必要な要素であり、立派な武器です。

むしろ、ある程度の柔らかさがなければ求められる動きが何もできない状態にもなることも想像できるでしょう。

(もっと膝が入ってたいなぁ〜と思う方、いらっしゃいますよね。ポワント乗りすぎて固めていたり、バンド張ったり。ねんざもしやすい、という方もいらっしゃいますよね。そしてそれが羨ましいと思う、というお気持ちもよく分かります。)

柔らかい部分はメリットであり、それによって引き起こされるデメリットはカバーできるようにしておけば良いわけですね。

優れた柔軟性の注意点


さて、ここで注意点を考えてみましょう。
デメリットなんてなさそう!柔らかければ柔らかいほど良い!と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ハイパーエクステンションの方にはおケガをしやすいというお悩みを持つ方が多くいらっしゃいます。
ご年齢や活動状況、身体の状態などで、今現在の段階では全く問題のない方もいます。
ですが、想像してみましょう。
ちょっとゆるめで安定性が低いところに、日々の活動で負荷がかかってくる。
そしてそれがわりと長期間に渡る、左右のどちらかにだけ集中する、ポワントを履く、などの環境が加わってくる。
どこかで耐えられなくなる可能性も、場合によっては考えられると思います。


このような負担のかかり方や疲労を考慮しつつ、関節の状態やまわりの筋群がどのような状態であるかをピラティスのエクササイズを通して想定しながら内容をご提案することが大切になります。
突然大きな負荷(おもり)をかけると良くないケースや、充分な可動性があるからといって、不用意に大きく動かしすぎない方が良いエクササイズもたくさんありますので注意が必要です。

ダンサー対応が多くない場合、やってしまいがちかもしれません。
当スタジオでは、ダンサーさん特有の可動性や、実際に求められている範囲などを加味して、皆さまお一人ずつに合わせたセッションを組んでいきます。

過度可動性のカバー


では、どのような方法で優れた可動性のもつ注意点をカバーしていけばよいのでしょうか。

その箇所に合わせて適切な筋力を保っておくようにし、柔らかい関節や筋群に負担がかかりすぎないようにコンディションを維持すること、
姿勢全体や骨のアライメント(配列)をコントロールし、負担がかかりにくいポジションを自ら体得しておくことなどが必要です。

かかる負荷を調整できるピラティスでは、このあたりが非常に得意で優れています。

「良いポジション」というのは、長年の癖や好きなやり方により、自分の身体の感覚のみではわからなくなっていることもありますので、客観的にチェックしてもらえる環境が望ましいといえます。

このようなことは、通常のダンスレッスンやお稽古のみでカバーすることはなかなか難しいこともあるかもしれません。

繰り返しますが、可動性があること自体はメリットとも言えます。
全く動かしません!ということではなく、正しくあるべき位置自体はご自身のお身体で前提として認識している必要があり、柔らかさは損なわずに他の箇所でも支えられるようにするための適切な筋力トレーニングが大変重要です。

スタジオでは、お身体の使い方やおケガ歴などを考慮し、プラスしていくべきところを想定してピラティスセッションを組んでおります。
ご自身では気がつくことが難しい細かいアライメント修正や、微妙な筋バランスの違いも確認しています。

また、ダンスやスポーツはやっていません!という方でも、部分的に柔らかい関節をお持ちの方はたくさんいらっしゃいます。
こういった方は、現在の運動習慣によってはご年齢を重ねるにつれ、場所により何らかの不調が出てくることが考えられますので、トレーナーと方針を確認して筋力を落とさないように適切な運動をしておく必要があります。

まとめ


ダンサーは、その可動性の高い身体を活かしながら、ケガのリスクを最小限に抑えるために、適切なトレーニングと管理を行うことが重要です。

可動性の高い身体の特徴・メリット

  • 関節のはまり方が浅かったり、周りの靭帯が少しゆるかったりするため、柔軟性に優れている
  • ダンスやスポーツにおいて、美しい表現や高度な技術を可能にする
  • 非日常性や美しさを感じさせる表現力が可能

可動性の高い身体の注意点

  • 関節周辺のトラブルやケガのリスク
  • 不安定さやバランスの難しさ
  • 筋肉への負担増加
  • 疲労や痛み

可動性の高い身体を安全に維持するためのポイント

  • 箇所に合わせて適切な筋力を保つ
  • 骨のアライメントをコントロールし、負担がかかりにくいポジションを体得する
  • 身体の正しい位置を把握する
  • 強化が必要な箇所は継続的にトレーニングする

ダンサー特有の可動性とリスク管理

  • ダンサーは、可動性の高い身体を前提としたトレーニングが必要
  • 可動性の高い箇所は、特にケガのリスクが高いため、注意が必要
  • ピラティスなどのエクササイズを通して、可動性と筋力のバランスを整える
  • 専門家の指導を受けながら、適切なトレーニングを行う

特有の動き方を理解した上で、身体的な特徴を活かしながら、より安全なご活躍ができるようなサポートをピラティスを通して行っています。

これまで、なんとなく納得できなかった、疑問が残った、自己流のトレーニングに不安を感じている方は、ぜひご相談ください。

≪参考文献≫
ジャスティン・ハウス/モイラ・マコーマック.ダンステクニックとケガーその予防と治療ー改訂版.白石佳子/平石英一/水村(久埜)真由美訳.大修館書店.2016.271p.

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