こんにちは。
宝塚市のマシンピラティス スタジオstudio Y (スタジオイグレック)です。
当スタジオでは、姿勢改善や肩こり・腰痛などの不調緩和から、
バレエやダンスをされる方のトレーニングや、コンディショニングとしてのピラティスもご提供しています。
ピラティスを通して、より動きやすく、強いからだづくりをサポートします。
ダンサーの方とのピラティスセッションでは、足首まわりのトラブルやおケガ、
また足首周辺から由来するであろう不調に巡り合うことがよくあります。
現状は特に問題がなくても、エクササイズ中での状態を観察することで、起こりやすいトラブルを予測できることもあります。
ダンサーさんセッションでは、足首まわりが柔らかい方と多く出会います。
柔らかいことはもちろんメリットではありますが、不安定さの原因になるととらえることもできます。
ヒールやポワントを履かれる場合には、この不安定さがさらに仇となるケースもあります。
これは、特に踊りをされていない方やシーンでも同様で、「なんだかわからないけどよく捻挫する、よく転ぶ」という方にも当てはまります。
反対に、足首周りが強固で可動域制限がありすぎても、できる表現や動きが限られてきますので、
この「柔らかい/制限」がある、は双方のバランスを考えながらのセッションが大変重要となります。
※高い可動性に関しては、別記事もぜひご参照ください。
Contents
起こりやすい足首まわりのケガ、トラブル
ケガ
- ねんざ
- アキレス腱障害、アキレス腱断裂
- ふくらはぎの肉離れ
- 疲労骨折
トラブル
- 繰り返すねんざ
- 脚のライン、膝下のねじれ(O脚)
- 膝の痛み
- 足裏のトラブル(たこやうおのめ)
- 外反母趾
考えられる原因
上記のケガやトラブルにお悩みの方も多くいらっしゃるかと思いますが、これらは何によって引き起こされるのでしょうか。
原因はもちろん多岐にわたりますが、ダンサーの方に多いと考えられるケースを少しご紹介していきます。
回内(ローリング)
足首周辺のケガ・トラブルの要因は様々なものが考えられますが、その中のひとつとして、足関節の回内が挙げられます。
足首を内側にローリングして、足裏アーチ(土踏まず)がつぶれてしまう状態です。
足首周辺以外の不調やケガであっても、この足首のローリングが根本的な原因となっていることも考えられます。
足裏アーチがつぶれている状態だと、正しいアライメントでの足首の動きが妨げられてしまい、さまざまな動きに制限がかかりやすくなります。
結果、О脚等の脚のラインの問題やケガなどのトラブルにつながります。
人間は立位の状態において、足裏のみしか地面に接地していませんので、この足裏の状態がどうであるかということが全身にもたらす影響はとても大きくなります。
移動やジャンプをするならば、尚更重要です。
足裏の不安定な状態を、太ももやおしりなどの脚全体や骨盤部、腰部や肩などの上半身でカバーして成り立っていることもあるのです。
言い換えると、本来は必要のなかった部分の頑張りを、足裏の不安定な状態によって他の部分に余分に強いていることになります。
そしてその「他の部分」は、本来の働きよりも無理をしている状態になりますので、変な方向へ引っ張られていたり、無駄な筋緊張が入っていたりということになっています。
そのエネルギー、他に使ってあげられそうに思いますよね。
足部の安定は、身体の無駄な力を抜くことができ、よりのびやかな動きを表現することにもつながります。
踊りをされていない方でも、この回内状態、足裏アーチが消失している状態の方は多くいらっしゃいます。
むくみや冷え、股関節や膝のお痛みにも影響を与えることがありますので、足裏アライメントの改善はぜひ取り組んでいきたいポイントです。
ターンアウトの影響
運動量が充分なダンサーの場合、上記のような回内による足のミスアライメントは、クラシックバレエでの無理なターンアウト(en dehors/アンデュオール)の影響を多く受けている可能性があります。
これはターンアウトが悪、ということではなく、それを目指す過程に問題があるかもしれない、ということです。
とにかく足のポジションを180度に近づけるように頑張ると、脚の上部(股関節部や大腿骨)がうまく外旋(ターンアウト)していないのに、
最下部の足(フット)部分でとりあえず開いたことになっているケースはよくある光景かと思います。
シューズの部分だけ見るとなんとなく開いているわけですね。
お心当たりのある方、多くいらっしゃると思います。
開かなきゃ!というお気持ちもよくよく分かります。
そしてこれは、冒頭に述べたように、関節の柔らかさを持っている方ほど、
足先(足首)だけを容易に開くことができてしまう傾向にあります。
小さい頃は平気だった、そこまで気にならなかった、という方でも、成長期を経て筋力がしっかりと強くなってくることや、それまでの使い方の積み重ねにより、ねじれが強固になっていることが考えられます。
このねじれは、脚全体から全身の使い方や姿勢全体に影響を与えます。
多くの場合、大腿部は内旋し、前ももや外ももは緊張しやすくなり、下腿(膝下)は外向きに捩れます。
そしてその間に挟まれた膝に痛みが出ることも考えられます。
もちろん、1番下に位置する足関節(足首)も同様です。
このケースには本当によく遭遇しますし、私自身も大変心当たりがあります。
今はダンスをされていなくても、過去にバレエをされていた方も当てはまることが多いです。
このねじれが、後々他の問題を引き起こし無理が響いてきたのがきっかけで、身体の使い方の見直しとしてピラティスを選択される方もいらっしゃいます。
今はそんなにターンアウトが必要ないよ、という方も身体全体に影響を与えている箇所でもありますので気を付けておきたいポイントです。
自分の1番(1st potision)、どうなっているのかな?とぜひ改めて考えてみてください。
大人になってダンサーとして活動されている方の修正は、本当に根気のいるものになりますが、少しづつ正しい位置にスイッチングしていけると良いかと思います。
この場合は特に、足首だけではなく、おしり・もも・下腿すべての修正が必要となります。
ピラティスでは、さまざまなタイプのマシンを使用し、この感覚修正を促すことができます。
ねんざについて
お客様を担当していても、お聞きすることが良くあるねんざについてです。
ねんざは、「よくあること」として比較的軽視してしまいがちなケガです。
「ケガ」ともあまり認識されていないこともあるかもしれません。
ダンサーのねんざで多いのは、外側靭帯のねんざ、その中でも前距腓靭帯のねんざです。
いわゆる内反捻挫が大半を占めると思います。
前距腓靭帯というのは、足関節にある外側側副靭帯の中でも、最も負荷に弱いとされる個所です。
この靭帯は、底屈(ポイントの状態です)と内返しでストレスがかかります。
ポワントを履いたり、頻繁にルルベがあったり、ヒールを履いていて外側に向かって足首をひねってしまったり、という状況です。
足首が柔らかく、「甲が良く出る」タイプの方も注意が必要です。
また前述したターンアウトのコントロールがうまくいっていないと膝が内に入ってしまい、足関節のアライメントが崩れてケガにつながりやすくなってしまうことも考えられます。
グレードにもよりますが、ある程度の期間で痛みや腫れが消失していきますので動けないという状態はそう長くは続かないことが多いケガかと思います。
ねんざを繰り返す方の問題点は、過去の捻挫での損傷のリハビリが充分にできていないまま次に進んでいることにあります。
なんとなく痛くなくなったかな、で動き始める方が多いのではないでしょうか。
もちろんずっと休んでいることはできないので、痛みが引けば早めに復帰したいとう心情もわかります。
しかし、捻挫受傷後の筋力やバランス感覚は受傷前とは大きく変わっていますので注意が必要です。
弱かった部分を適切に強化しないまま同じような動き方を繰り返していれば、また同じようなエラーが起こり、捻挫をする。
このようなことを想像できるかと思います。
よく「繰り返す、癖になる」というのはこのためですね。
復帰への目安やリハビリ、強化のためのトレーニングプランなどは、よく計画していくことがおすすめです。
〈捻挫を引き起こす可能性のある要因〉
- 足の内在筋の弱さ
- 腓腹筋の弱さ(ふくらはぎ)
- 足関節のコントロール不良
- ジャンプからの着地コントロール不良
- 骨盤・腰椎・体幹部の不安定さ
- 緊張状態でのダンス
〈注意ポイント〉
グランアレグロ等の大きなジャンプ時よりも、通常のアレグロ系のジャンプの着地時の方が、捻挫をするリスクが高くなります。
着地までの時間が短く、良いポジションへの着地を準備が間に合わないことがあるためです。
特に、バットゥリー(batterie)を含むようなアンシェヌマンの際には注意しましょう。
ピラティスでのアプローチ
ケガやトラブルの状態によっては、まず治療が必要な場合もありますので、
医療機関にかかられている方はその方針を優先しつつご相談ください。
場合によっては先に受診をされた方が良いこともありますので状況により判断が必要ですが、ここではピラティスで対応できることをご紹介していきます。
おケガ後のリハビリとしてもピラティスはおすすめですが、リハビリ的な観点から先の、より動きを引き出すことも得意なメソッドですのでぜひ取り入れてみてほしいなと思います。
ねんざや肉離れ後の注意点
ふくらはぎの筋肉は短縮しがちであり、足の内在筋はすぐに衰える傾向があります。
ケガ後に休んでいる期間や使えない期間があると、すぐに硬くなるということです。
これらを念頭に置いて、エクササイズプログラムを組み立てます。
足首の不安定感を払しょくするために、バランス感覚や固有感覚のためのエクササイズも取り入れます。
また、足関節のケガではケガ後数日でふくらはぎの筋肉が硬くなります。
その硬い状態でレッスンに戻り、深いプリエ(グランプリエやフォンデュ、ジャンプなど)を行おうとすると、硬くなっていない部分で積極的に動きがちになるので、再度足がローリング(回内)した状態に引き込まれやすくなります。
筋肉の硬さによってのアライメント不良が再度定着する前に、正しい位置での運動をスタートできると良いでしょう。
ピラティスで使用するマシンには、スプリング(バネ)がついているものがあり、これを用いることで筋肉の弾性を引き出しながら強化することが可能です。
また、ねんざ後のトレーニングや、予防のための強化には、足首の底屈(ポイント)状態での運動が望ましいですが、ピラティスのマシンではこの状態を作り出してエクササイズをすることができます。
特にリフォーマー、チェアがとても重宝するマシンとなります。
負荷調整もできますので、おケガ後であっても、状態が良く、より強化したい時であっても双方の対応ができます。
またプライベートセッションでは、良い位置でポイント/フレックスができているかどうか、都度判断・修正させていただくことができます。
正しいアライメントづくり・修正
大人の方でダンサーとして活動をされている場合は、脚のアライメントの見直しと、その正しい位置での筋力強化を定期的に行なっていくことがおすすめです。
足首の「まっすぐ」は、ご自身で思っているような「まっすぐ」とは異なっていることがあります。
曲がりやすい方にいきやすかったり、普段から慣れている方向に曲がりやすかったりしがちです。
加えてヒールを履かれる場合、さらに不安定な環境がプラスされますので注意が必要です。
ダンスの場合は、通常の「背伸び」や「足首、膝を曲げる」とは異なった動きが要求されます。
要するにプリエとルルベですが、この頻度はとても多くなり、可動域も幅広く、タイミングや速度も様々です。
それを状況に合わせて自然とコントロールしなければなりません。
ルルベの時は、通常時よりも高く上がっていなければならないことが多く、そのポジションでどうであるかという判断をセッションではしていきます。
またプリエも同様です。
前ももや外ももの張りに悩まされている方は多くいらっしゃる印象ですが、適切にストレッチをかけながら、拮抗する筋群にもしっかりとアプローチできるエクササイズはたくさんありますので、
ダンサーさん特有の脚の使い方を考慮したセッション内容で、感覚をつかんでいただけたらと思います。
10代の方は、なるべく早い段階で良い感覚を身に着け、良いアライメントを自分で判断できるようになることがおすすめです。
成長過程で時間が経過すればするほど、ねじれは強固になり、修正に時間と根気が必要となります。
これら足首の状態は、プリエにも影響しますので、踊り全体のクオリティのためにも重要な要素です。
※プリエの記事もぜひご覧ください。
正しいアライメントでの強化
本来は、通常のダンスやバレエレッスンにおいて、足首は適切に強化されるようにデザインされているはずなのです。
レッスンが進むにつれて、プリエ、タンジュ、ルルベと足首の運動をさまざまなパターンで繰り返していきますので、全てが正しいアライメントでできていれば、安全にそして充分に強化されるでしょう。
しかし、すべての人、タイミングにおいて良いアライメントが保てているかというと、これはかなり難しくなります。
センターに行くにつれ、またコンクールや発表の場などではテクニックを優先させなければならないシーンは多く想像できますし、音にも合わせなけばならなくなります。
通常、バレエをはじめ、ダンスレッスンはグループレッスンとなりますので、指導者がすべての人のアライメント修正に、すべての時間を付きっきりになることは現実的ではありません。
軽微なエラーは度々見逃され、無視され続けた結果、その使い方を身体が学習している。
それを何回も、何年も積み重ねていることもあるでしょう。
ピラティスでは、このような身体の使い方の再学習、再教育に活かしていただくのにおすすめです。
様々な負荷パターンを利用しながらも正しいアライメントを習得できているか確認しながらエクササイズをすすめていただけます。
見直しにぜひご活用ください。
脚/足のミスアライメントは、なるべく早い段階で正しい位置に修正をかけてあげることが必要です。
この修正は、増える練習量には到底追いつかないこともあるかもしれません。
ですが、わずかであっても正しいアライメントや理想的な使い方を知っていれば、安全に活動するための安心材料となります。
最終的に、綺麗に見える動きやポジションにはやはり基礎、下地が必要です。
また、ご自身のお身体のためにも、安全な動作パターンや「ここが合ってる!」という良い位置の把握はぜひできていた方が良いと思います。
長く、安全に活躍されるためにも根本的に必要な要素です。
基礎を無視していても、ある程度は問題なく進んでいける場合もあるかと思います。
ですが、どこかのタイミングで無理が響いてくる懸念があることも、理解しておかなければなりません。
活動量や疲労が多くなることで、突然のケガや不調と付き合い続けなければならなくなるリスクも考慮しておいてください。
ピラティスでは見栄えをひとまず置いておき、地道な下地作りもたまに取り組んでいただけると良いと思います。
そして、「正しい位置」を知っている、理解しているだけでも充分にメリットとなるはずです。
プライベートセッションでは、見栄えや表現ではなく、そのための基礎作りに集中して取り組んでいただける機会とお時間、ととらえていただけたらと思います。
おすすめするピラティスエクササイズ
- リフォーマー、チェアーでのフットワーク
- ポイント状態でのレッグパンプス
- ジャンプトレーニング
- 股関節内転筋群の強化
- おしりの深層筋トレーニング
- バランストレーニング
これらを様々なマシンを用いて、アライメントチェックをしながら行います。
〈得られること〉
- ルルベの安定
- ヒールでの不安定さ解消
- プリエコントロール
- バランスの安定
- ジャンプの高さ、着地の安定
踊りをされている方だけではなく、外反母趾に悩まされている方やよく捻挫する、よく転ぶという方も、股関節やおしり、大腿骨の使い方を修正し、体重の乗り方を改善していくと良いでしょう。
特にスポーツや運動をされていない場合で、足裏アーチの低下や外反母趾にお悩みの場合、長年の癖や、足裏をはじめとする筋肉の筋力低下、運動不足などが原因で引き起こされている可能性があります。
これは、単純にアーチを持ち上げておけば良いという問題でもありませんので、正しいアライメントで適切な筋力トレーニングを継続して行なっていきましょう。
プライベートセッションでは、動きの中でどのような使い方をされているのかしっかりと観察させていただき、動きの中で正しい位置を見つけられるように修正をかけながら進めております。
足首まわりのトラブルでお悩みの方、ご不安のある方は、ぜひご相談ください。
≪参考文献≫
ジャスティン・ハウス/モイラ・マコーマック.ダンステクニックとケガーその予防と治療ー改訂版.白石佳子/平石英一/水村(久埜)真由美訳.大修館書店.2016.271p.
Terry L.Spilken/.ダンサーズフットブック:ダンサーのフットケア完全ガイド/安井慎一(翻訳)/大修館書店.1995.115p.